確かに俺のことは、まだなんも教えてないけど…。
だからと言って、何でそんな自信に満ち溢れたようなデカい態度で言えるんだよ。
コイツ、本当にだんだん変わってきてねぇか?
最初のあの感じはどこいったんだよ…。
「あーハイハイ、わかりました。俺のこと教えりゃ話してくれんだな?」
「大学生なの?」
って人の話を聞けやコラァ!!!!
「…そうだよ。神谷仁。20歳。大学2年。ここで一人暮らし中。あ、仁て『人べん』に『二』で『仁』な。」
「へー、仁かぁ…。かっこいい名前だね。」
うっ…!
な、なんだよ今の…。
なんか今、少女漫画みたいに心臓がズキュンってなったぞ、ズキュンって!(少女漫画読んだことないけど…)
ちょっと待て俺。
相手は中学生だぞ。
まだちんちくりんのガキだぞ!
落ち着け俺!
自分を取り戻すんだ俺!
ちょっと笑顔が可愛かったからって騙されるな俺〜っ!!!
「彼女はいないの?」
「……」
内なる自分と戦っていた俺が問われたことは、今、最も聞かれたくない内容だった。
香代の顔が、思い浮かぶ。
まだ目の裏にしっかりと焼き付いている香代の笑顔と、別れを告げた時の、あの泣き顔…。
