千里は顔をあげると、俺の目を真っ直ぐに見て言った。
「あたしに親なんかいないよ。」
「…え…」
親が、いない…?
「お母さんはあたしが12の時に死んだ。お父さんは、いるけど…でもあんなの、お父さんなんかじゃない。だからあたしに親はいないの。」
「どうゆうことだよ…。」
千里はソファーの上で体育座りをして膝に顔を埋めると、やっと聞き取れるくらいの声で喋り始めた。
「…あたしのお父さんは、本当のお父さんじゃないの。本当のお父さんは、あたしが生まれる前に消えたらしい。」
「消えた?」
「蒸発しちゃったの。理由はわかんない…。それであたしが11の時に出会ったのが、今の人。突然家に知らない男連れてきたと思ったらいきなり、あなたの新しいお父さんよ、って…。」
「……」
やっぱり、そうゆうのってショックなのだろうか。
俺には全然わかんないけど…。
