俺はスウェットのポケットから携帯を取り出した。
最終手段だ。
「もう埒が明かないから警察に連絡するわ。家出少女を1名保護しました、って。」
「えっ…!?」
彼女はここに来てから初めて俺と目を合わせ、そして声を出した。
大きな瞳で不安そうに俺を見上げている。
最初に彼女を見た時と、同じ瞳だった。
「だって仕方ないだろ?あんたなんもしゃべんねぇし、俺だってどうしたらいいかわかんねぇもん。」
「っ…――」
本当は佐々木さんとこに連れてこうと思ってたけど、きっとそうしても今みたいになるだろうからやめた。
佐々木さん夫婦を困らせたくもないし。
そして通話ボタンに指を置いた時。
「やめてっ…!!!」
「うおわっ!!」
バターン――!!!
突然彼女に、ソファーの上に倒された。
「ってぇー…。何してんだよあんた、あぶねぇだろうが!」
「やめて!お願い…警察だけには言わないで!」
「え…?」
「お願い!何でもするから…何でもします、だから!…っ警察だけは…やめて…!お願い…します……」
そう言うと、彼女は俺の上で泣き出した。
小さく嗚咽を漏らしながら、俺の胸を涙で濡らす彼女の体は、小刻みに震えていた。
