―5月下旬。
学年が変わり落ち着いてきた頃。



遥香「センセー…
   もういいでしょ?
   バイト遅れちゃうしぃ」

遥香「痛ッ‼」

先生の持っていたペンで
頭を叩かれた。

遥香「何すんのぉ?」

先生を軽く睨んで言った。

成瀬「お前がちゃんと授業を
   受けないからいけないんだろ?
   ほら。あと2問だけだよ。」

先生がテキストを指で指した先には
訳の分からない数字と記号が並んでいた。

遥香「マジで無理だから‼
   バイトまで30分切ってるんだよ!?
   残りは家で…「ダメ。」

遥香「何でぇぇ」

机に突っ伏した。

今は見ての通り数学の補習中。
あたしが授業中に寝てたから…。
でも横で丸付けをしているこの先生
―成瀬先生を好きだったりする。
だからこの時間は嫌いじゃない。

成瀬「じゃあ今回は許してやるよ。
   バイトまで時間ないんだろ?
   急げ。」

遥香「やった!
   先生ありがと。
   でも明日も補修とか嫌だからね。」

…嘘だけど。

成瀬「お前がちゃんと授業を
   受ければいい話だろうが。」

苦笑しながら先生が言った。

遥香「はぁい(笑)
   バイバイ、先生。」

成瀬「おう。気をつけて帰ろよ。」