神 =まぁ、そう責めてくれるな。
   あまり人間世界に干渉することも、良くないことじゃでの。
   といって、放っとき過ぎたかもしれんがの。
   一度ここらで、雷でも落とそうかと考えてはおるのじゃ。
   これから先、人間共が、今少しの反省をするならば・・と、
   人間世界で言う異常気象を起こさせておるのじゃが。
   で、どうかね?先ほどの、少年のことは。

閻魔=申し訳ございません、話が逸れてしまいました。
   少年の住む日本という国は、敗戦後に価値観が一変したのでございます。
   道徳観も、百八十度の、大転換でございます。
   お分かりいただけますでしょうか?

神 =なるほど・・。
   お前は、この少年は狂っていると、言うのだね?

閻魔=実のところ、困っております。
   今の時代においては、狂人と断じて良いと思うのでございますが・・。
   唯、この少年の場合、
   そう断じて良いかどうか・・判断に苦しんでおります。

神 =お前も、かね・・。
   私も今、迷っているのだよ。
   地獄行きか、ここに来させるべきか・・、とね。
   一つ、前例のないことだが、
   少年の言葉に耳を傾けてみることに、しょうかの。

少年=僕は狂っちゃいなぁいぃ!
   世間の奴らが、狂ってるんだ!
   お父さんもお母さんも、学校の先生も友だちも、いや、みんながだ!
   僕が正しい、とは言わない。
   でも、狂っちゃいない!
   冷たい、いやそんな生易しいものじゃない。
   恐ろしい世間の奴らよりは、
   曖昧さを拒絶するマネキンの方が余程落ち着ける。
   人間のように勝手な論理を振り回したりしないし、
   傍若無人な行為もしない。
   口では、「弱者に優しい社会を!」なんて言うくせに、
   強者の論理で行動してるじゃないか。

閻魔=私は、色々の精神を患らった者に出会いますが、
   こんな少年は初めてです。
   明らかに狂い人だと思いながら、一方で否定するのでございます。
   と言うよりは、そうであってはならないのだ・・、
   と私自身に言い聞かせているように、思えるのでございます。
   まぁ、私の話を聞いてくださいな。