「ねえ〜。こんな都市伝説知ってる」

時間は過ぎるのは速い。

特に、若い頃はだ。

長く感じるのは、つまらない授業だけである。

放課後、学校から帰る道で、真理亜は同級生の祥子と帰っていた。

「人間の姿をした化け物が、夜な夜な町を徘徊してるらしいのよ。それで、暴走族とかやくざと戦ってるらしいの」

祥子の話に、真理亜は苦笑した。

「何?そのB級映画にもない話」

「それで、その化け物達は人間に姿が近くって!つい最近は、密入国者を襲ってるらしいのよ」

「つまらない」

真理亜は前を向くと、歩く速度を上げた。

「でも、目撃情報が、学校の近くで!」

まだ話を続けようとする祥子に、真理亜は足を止め、振り返ると、

「もし!そんなコスブレをした不審者がいたら、警察が取り締まるわ。日本の警察は優秀だから」

ため息をついた。

「そうか。真理亜の近所のお兄さんも警察官になったんだよね」

祥子は腕を組むと頷き、

「なかなか立派なことだ」

感心したように言った。

「まるで祥子の言い方だと、その化け物が悪者と戦っているみたいじゃない」

真理亜は前を向いた。

「そうね」

祥子は、にやりと笑い、歩き出した真理亜の背中に向かって言葉を投げた。

「真理亜!あたしも卒業したら、警察官になるわ」

「え!」

驚き振り返った真理亜に、祥子は微笑んで見せた。

「この国を守るの」

「!」

初めてきいた親友の言葉に、真理亜は目を見開きながら頷いた。

「いいことだよ」

そして、微笑み返すと、手を上げた。

「じゃあね。祥子」

前を向くと、真理亜は走り出した。

いかなければならない場所があったからだ。

そこは、学校の近くの雑居ビルの裏側。

「は、は、は」

真理亜は足を止めると、その場所にいるだろう子犬に餌を上げようと、鞄からパンを取り出した。

「え」

しかし、そこには子犬だけではなく、薄汚れた男が膝を抱えて踞っていた。