アンダーホッパー

「や、やはり…勝てない」

ふっ飛ばされ、資材置き場の壁にめり込んだ和幸に、真理亜が駆け寄った。

「大丈夫!」

「フッ」

和幸は笑い、

「あんた…俺が恐くないのか…いや、それよりも逃げろ」

真理亜の顔を見た。

「恐いけど!あたしの為に戦ってくれているくらいわかるから!」

「!?」

和幸は、真理亜の全身が小刻みに震えていることに気付いた。

「組織からの命は、サンプルを連れて帰ること。動作については、言われていない」

ニューホッパーはにやりと笑いながら、近付いて来る。

(和幸!)

父の声が、和幸の頭にこだました。

「そうだな」

和幸は、立ち上がると、真理亜を後ろに促した。

「どいていてくれ」

そして、走り出した。

すると、再びベルトが回り出した。

「旧型が」

ニューホッパーは、両手を広げた。

「フン!」

和幸は身を捩ると、風を纏いながら、蹴りを繰り出した。

「効かぬ!」

(和幸!諦めるな!)

父親の声が、こだまする。

「うおおおぁっ!」

和幸は、咆哮した。

そして、何度でも蹴りを繰り返した。

「ばかめ!はははははは!」

「うおおおおっ!」

「はははははは…ば、馬鹿な!」

余裕を持っていたニューホッパーの顔色が、変わった。

胸の装甲が、剥がれて来たからだ。

「貴様!」

ニューホッパーは思わず、後ろに下がると、空中にジャンプした。

「私の素晴らしい体に!」

そして、怒りの形相で地上を睨み、蹴りの体勢に入った。

「!?」

しかし、地上に和幸はいない。

空を見上げる真理亜しかいない。

「ば、馬鹿な!」

ニューホッパーが、上を見上げると、そこに和幸がいた。

「わ、私より高いだと!?」

「フン」

和幸は笑い、

「子供の頃…足腰は鍛えられたしな。それに…数十年は、逃げ足で鍛えられた」

蹴りの体勢に入った。