「私は君に興味を持ったんだよ」
 彼女はここまで幾度となく吐いた言葉を飄々と語りだした。
 僕と彼女こと白鳥 九黒は今、学校から一番近い公園のベンチに肩を並べて座っていた。雨はすでにやんでいるのだが、人は一人もいなく静かな風だけが音をたてている。
 この情景をほかの人が見たならば仲の良いカップルに思えるかもしれない。まぁ実際のところはまったく違うのだが。
 ここまでの道のりで聞いた情報を整理してみるとどうやら僕と彼女はクラスメイトらしい。
 らしいと言うのは六月というこの時期に入った今もまだ、僕がクラスメイトの顔と名前が一致しないことに原因があるのだろう。どうも興味がないものに対しての物覚えは悪すぎると言っても足らないくらい悪い。まったくどうにかしてほしいものだ。
「君はいつまで黙っているんだ。黙るために公園に来たのか?」
 彼女は心底あきれているのか肩をすくめて見せた。
 確かに、彼女の言う通り黙るためにここまでついてきたのではない。少しばかり僕も彼女に興味を持ったのだ。ゆえに聞いてみる。