天神学園高等部の奇怪な面々ⅩⅣ

「……」

保険医は声を潜める。

「貧乏神だからスか?」

それは、教師陣の中でも『人外』に関わる者…保険医や教頭だけが知っている秘密。

鞠子は人間に育てられた貧乏神である。

貧乏神とは、本来はとり憑いた人間やその家族を貧困にする神というのが相場であるが、生まれつきなのか人間に育てられたせいなのか、彼女は他者を貧困にする事はない。

その代わりいじめられっ子気質でやたらと『貧乏くじ』を引く傾向にある。

即ち貧乏神としての能力を、自分に発揮してしまうのだ。

ある意味、不幸体質少女に似ていると言える。

「まぁ…向いてないなんて言わずに」

鞠子の机に『角砂糖』を置く保険医。

「俺らもなるべくフォローするから、頑張って下さいっス」

ヒラヒラと手を振りながら歩いていく彼の背中を見送りつつ、鞠子は有り難く角砂糖を一口飲む。

「…やっぱり美味しい…流石私の監修した飲料…朝はこれに限るわぁ…」

ちょっ、マジか鞠子っ!