おや、と。

スペシャルバカが、魔法使い男子が、ヤンブラコンが、男の娘先輩が。

その名前に反応を示す。

同じ反応を示したのは佐伯 雪菜(さえき ゆきな)も同様だ。

(小岩井さん…?…どこかで聞いた名前だなぁ…保健室に在住している幽霊の…あれ?あの幽霊さんは名前何ていったっけ…?)

喉元まで出掛かっているのに、名前が出ない。

『小岩井』という名字に覚えがある筈なのに、どうしても思い出せない。

何だかおかしな感覚だった。

そんな中、壇上。

少し長めの黒髪、中肉中背、灰色のツナギを着用した20代半ばの男性が前に出る。

服装の割には清潔な印象。

顔は端正な作りながらも美形とまではいかず、平凡な雰囲気。

無口で表情には乏しい。

「はじめまして」

抑揚のない声で彼は言う。

『はじめまして』と。

「私は用務員を務めます小岩井 防人といいます…よろしくお願いします」