次の日私は陣先輩と一緒に信太先輩のお見舞いに来ていた。

信太先輩が好きだというカボチャプリンを持って。

ドアを叩くと中から信太先輩の声が聞こえた。



「おはようございます。信太先輩。」


「信太、体はどうだ?」


「あぁ。まぁまぁだな。病院食に飽きたわ。つか、気軽に俺の名前呼ぶんじゃねぇよ。」


「ご…ごめんなさい。」


「信太。素直になれよ。蓮を助けたのは蓮を認めたんだろ?お前が女を助けるなんてそうそうねぇからな。」


「…ただの気まぐれだよ。まだこいつを認めたわけじゃねぇ。そこら辺の女と同じかもしれねぇしな…。」



そう言った信太先輩は私を探るように見てきた。
その瞳は何かに怯えてるようだった。

信太先輩は何に怯えているの?

そう聞きたくても聞けないのが現実で…。



「それより、蘭さん達は?」


「あぁ。なんか蓮の部屋のドアを蹴破って親にボロクソ文句を言われたから海鈴さん達と直すって。だから、直してから来んじゃねぇかな?」


「そっか…。おい女。お前に怪我は?」


「な…無いです!!」


「ふーん。」



陣先輩に向ける瞳とは違ってすごく冷たい。
言い方も冷たいけど言ってることは優しいんだ。


「あ、蓮。信太に作ってきたプリン出してやれよ。」

「プリン?」


「あ、はい。私が作ったんですよ。美味しいかどうかは分かりませんが、し…先輩が好きだって聞いてカボチャプリン持ってきたんです。」


「カボチャプリン?」



そう言って私を見ている信太先輩はなんか子犬みたいで可愛かった。



「はい。でも、いらないですかね?」


「バッカ!!お前!!いるに決まってんだろ!?なんでそれ早く言わねぇんだよ!!」

「忘れてました。すいません。」


「早くここに持って来い!!なぁ!!陣ちゃん!!下で紅茶買って来てくれ!!」


「はぁ?」


「金出す。ほら!!頼んだ!!」



急に元気になった信太先輩は私がテーブルの上に置いたカボチャプリンを早速開けて食べ始めた。
それを見てため息を吐きながら陣先輩が紅茶を買いに行った。