私はまた彼を目で追っていた。


夕焼けの空の下、サッカーに熱中している。


サッカーをしている彼は、本当に輝いていた。


――私、井上くんが好き。


「お待たせー、瑞希」


「藍ちゃん」


教室で好きな人を見ていると、先生に呼び出されていた友人が帰ってきた。


「ごめんね、一時間くらい待った?」


「大丈夫。気にしないで」


――お陰で井上くんのこと見てられた。


「先生になんて言われたの?」


「私のことはいいよ。早く帰ろ」


「え? 教えてくれないの?」


「うん、ひーみーつー」


藍ちゃんが遠くに行ったのを確認して、私は、自分の机の上の傷をそっと撫でた。この傷を見るたびに、自分を変えたいと思う。


クラスで人気者の井上くんと付き合えたら、みんな誤解を解いて、私のことを認めてくれるのに……。


「瑞希?」


藍ちゃんが、ドアの隙間からひょこっと顔を出す。


「なんでもないよ。帰ろっか」


「怪しいなあ」


そんなある日の放課後。今はとても幸せ。