空を斬る音がし、「死」を感じた土方。
硬く目をつぶり、最後の時を待った。
しかし、いくら待ってもそれは来ない。
不思議に思い目を開けてみると、夜神は土方の首に刀を突きつけただけで、斬る様子はまったく無かった。

土方は悔しさでいっぱいになる。
負けたこともそうだが、何よりも悔しいのは手を抜かれたことだ。
それは、土方の自尊心を傷つけるものだった。

「・・・・・情けならいらない。早く殺せ。」

その言葉を聞いた夜神はため息をつくと、刀を鞘に納める。
そして、鋭い目を優しい目へと変えると言った。

「言ったでしょう。私は試合のつもりでやると。私はあなたを殺すつもりなどもとからありませんよ。」

呆気に取られている土方をその場に残し、夜神は去る。

夜の闇は簡単にその姿を消した。