対する夜神は決まりが悪そうに笑うと言った。

「それは内緒です。」

沖田はその言葉が気に入らなかった。
夜神の肩を力強く掴むと真剣な表情で夜神を見据えて言った。

「そうやって、何故立場を悪くするようなことを言うんですか!
素直に本当のことを言えば済む話でしょう。なのに何故、わざと疑われるような、怪しまれるようなことを口にするんです!?」
「沖田さんには言えないんです。」
「だから何故、言えないんですか。」

そう言った沖田は悲しそうに眉を下げる。
そんな沖田を、夜神はなんとも言えない表情で見つめていたが、周囲の人間が自分達に注目しているのに気づき、場所を変えようと沖田に申し出た。
沖田はそれに二つ返事で承諾すると、二人ともその場を去る。

人目の付かない場所へと移動した二人にはしばらくの間沈黙が続いた。
そんな中先に口を開いたのは沖田の方だった。

「どうして、あなたはいつも肝心なところを話してくれないんですか。」
「それは、肝心なところを話してしまえば、僕は新撰組を追い出されるからですよ。」
「そう言い切れる理由は何ですか?
もしかすると、そのまま追い出さないでいてくれるかもしれないじゃないですか。」

夜神はその言葉に反応し、少し悲しみを含んだ穏やかな笑顔を見せた。
やがて拳を握ると、覚悟をしたかのように話した。

「じゃあ沖田さんは、僕が昔、新撰組の敵だったと言っても僕を信用できますか。」
「そ、れは・・・。」
「できないのが普通ですよね。でも実際、僕は新撰組の敵だったんです。
土方さんと刀を交えたこともあります。土方さんは忘れているみたいですけど。」
「・・・・・。」

夜神は黙り込んでしまった沖田を一度だけ見るとそのまま続けた。

「これがずっと僕が隠そうとして、話さなかったことなんです。
話してしまえば、新撰組を追い出され、最悪殺されてしまう。それは避けたかったんですよ。沖田さんだって、もう僕を信じようとは思えないはずです。」

まるで同意を求めるかのように笑う夜神に、沖田はかける言葉が見つからなかった。
ただ何かを言おうと口を動かすだけで、そこから声は発せられなかった。