斉藤とのことも終わり、上機嫌な夜神は次の日、城下町を詮索していた。
といっても一人ではなく、沖田も一緒だ。

「色々あるものですね。美味しそうなものや、使えそうなものなど。何より、活気溢れています。」
「城下町に来たことが無いんですか?
姫様と仲がよろしかったようなので、来たことがあると思っていました。」
「姫様と会ったのは山の中なんですよ。城下町に来たことは一度もありません。」

周りをきょろきょろと見渡す夜神には、普段の落ち着きが無い。
フラッと何処かに行っては、戻ってくるの繰り返しだ。

「夜神さん、いいところを紹介しましょう。」
「いいところ、ですか?」
「はい。」

沖田はそう言うと、夜神の腕を引っ張ってある場所へと連れて行った。

「甘味屋?」

夜神の言葉通り、ソコは甘味屋だった。
中に入ってもいないのに漂ってくる甘い匂いは、食欲をそそる。

「ここの餡蜜は美味しいんですよ。」

そう言うや否や、沖田は夜神の腕を掴んだまま店の中へと入っていく。
もちろん、腕を掴まれている夜神も店の中へと入っていった。

「餡蜜二つお願いします。」

席を確保すると早速、餡蜜を頼んだ沖田は夜神の方を向いて、真剣な顔となる。
それを見た夜神の表情も硬くなった。
少し間を置き、沖田は口を開いた。

「僕はあなたを信じきれていません。」
「・・・・・。」
「ですが、あなたが敵ではないということは、ここ数日一緒に過ごして分かりました。
信じきれないのは、あなたが謎過ぎるからです。」

沖田の言葉に、夜神は苦笑いをするだけ。
それは、肯定とも否定とも取れない微妙な反応だった。