しかし、起き上がれたからといって状況が変わるわけではない。
夜神は息が上がっていて武器がないまま。
刀を取りに行こうとしても、刀がある方向に敵がいるためできない。

「夜神、後ろだ!」

原田の声が聞こえ、後ろを振り向くと同時に刀が振り下ろされる。

「丸腰相手に二人掛かりですか。」
「何とでも言うがいい。我らはただ貴様を殺すだけ。」

夜神はこの危険な状況の中で、笑って見せた。
まるで、この状況を楽しんでいるように思える。

「何が楽しいのだ。」
「ははっ。何が楽しいって?
まさかこんなに面白い状況になるとは思わなかったんでね。懐かしくて笑けてきたんだよ。」

そう言って敵を見た夜神の目は、獣のする目だった。
一度視界に入れた獲物は絶対に逃がさない、そんな目をしていた。

「そろそろ、終わりにしようか。」
「っ!!」

夜神から出た殺気に、敵は思わず身を震わせた。
夜神は何も持たないまま、敵の方へ走り出す。
誰から見ても、それは無謀な行動だった。
敵も、夜神の動きに合わせて刀を振る。

「僕の武器は、一つじゃない。
この、持って生まれた素早さと身軽さがある。」

夜神は敵が目前まで迫った瞬間、地面に手を突いて上へ飛び上がった。
それによって敵の刀は空を斬り、夜神の足は敵の頭に直撃した。

「まず一人。次はお前だ。」

夜神は今倒した敵から刀を取り上げると、それをもう一人の方へ向け、不敵に笑う。
敵は斬りかかっては来たが、あっさりとよけられ、命を落とした。

「馬鹿だなぁ、僕相手に二人じゃ足りないんだよ?」
「夜神、終わったのか。」
「見ての通り。」




夜神は笑顔でそう答えた。