夜神から出る冷たい殺気は、敵が全員命を落とすまで無くならなかった。

「敵の指しがねでしょうか?」
「そうとは言い切れない。
新撰組に恨みを持っているだけの人間かもしれないからな。」
「そういう場合もあるんですね、覚えておきます。
お教えいただきありがとうございます、土方さん。」

夜神はそう言うと、目を細めて前を見つめた。

「どうかしたのか。」
「あれが将軍様のお屋敷なんですね。」

夜神が指差したのは少し遠くにある城だった。

「ああ、そうだ。」
「あんなに綺麗な建物、初めて見ました!」

目を輝かせて言う夜神に、土方は自然と笑顔になった。
城を見てはしゃぐ夜神は小さな子供のようで、さっきまで冷たい殺気を放っていたことが嘘のようだ。

「夜神さん、遊びに行くんじゃないんですよ?
もう少し気を引き締めないと・・・。」
「わかってますよ沖田さん。
大丈夫です。やらなきゃいけない時は、ちゃんとやりますから!!」

笑顔でそう言う夜神には、説得力というものが皆無である。
沖田は呆れたようにため息をつき、土方は苦笑いをしていた。

「お屋敷にはいつ着くんですか?」
「もうすぐですよ。」
「楽しみです!」

夜神は疲れを知らないようで、城に着くまでずっと、はしゃいだままだった。