夜神の呟きが聞こえなかった沖田は聞き返したが、夜神は笑顔で誤魔化した。

「それよりも、僕達って囲まれてませんか?」
「そうですね・・・・。
今のところ襲ってくる気配はないので、土方さんや近藤さんも判断しかねていると思いますよ。」

夜神が土方の方を見ると、沖田の言葉通り土方は険しい顔つきで、人の気配がする方を睨んでいた。
それを見てどう思ったのか、夜神は目を閉じて微かに笑った。

「でも、彼らはもうすぐ襲ってきますよ。
今のところは襲ってこないって言ってましたけど、そろそろ痺れを切らすでしょう。」
「え?」

沖田が首を傾げた時、刀を構えた男が数人出てきた。

「ほら。
わかりやすい馬鹿な人達ですね。」

そう言った夜神が放ったのは、冷たい殺気。
今まで、沖田や斉藤に向けた殺気とは比にならない程の冷たい殺気が、夜神から放たれたのだ。
それによって、沖田は言葉を失ってしまった。
言葉を失っただけではない、驚きでその場から動けなくなってしまった。

「夜神さん。」
「はい、何でしょう。後、彼らは僕が殺してきましょうか?」

そう言った夜神は沖田に殺気を向けることは無く、どこか冷たい雰囲気を持っているだけだった。
土方もそれを感じていたらしく、夜神へと視線を向ける。
何かを探るような、そんな瞳で土方は夜神を見据えた。

「いや、いいですよ。
あれ位の人数、先頭の人達に任せておけば問題なんてありませんから。」
「そうですか。
確かに、構えや腰つきが素人ですね。」

くすくす、と。
何も可笑しいことなど無いはずなのに、夜神は笑った。