「夜神~!!
今日の主役はおまえだから遠慮なんかすんなよ!」
「あ、はい。」
「だからそれが遠慮してんだって。もっと気楽にいこうぜ!
敬語なんか使わずにさ。」
さっきから鬱陶しいくらいに話しかけて来る永倉に、苦笑いしながら相手にしている夜神を見ていると可哀想になってくる。
夜神もさすがに疲れてきていた。
そんな時、助け舟とも思える声が聞こえた。
「夜神さん、少し夜風に当たってきたらどうですか?
気持ちいいですよ。」
「はい、ありがとうございます。」
沖田に言われた通り外に出てみると、外は冷たい風が吹いていて、大広間の熱気で火照った身体を冷やしてくれる。
ふと、夜神が空を見上げると、空には満天の星と三日月がきれいだった。
夜神は何かを思い出すように目を閉じると呟いた。
「夜の神、夜神。」
それは、夜神の名前の由来であった。
昔、夜神と一緒にいた人物にとって、月が神のように思えたから『夜の神、夜神』となったのだ。
「懐かしいな。」
目を開けた夜神の瞳に映った悲しみの色。
それはすぐに消えて、夜神は大広間へと戻って行った。
夜神がいた場所に残されたのは、冷えきった風だけであった。


