「あいつは、何であんなところで寝てやがんだよ。」
屯所内にある木の内のひとつ。そこで少女は気持ちよさそうに眠っていた。
寝息をたてて眠る少女を見ていると、起こすのを躊躇してしまう。
「夜神!」
名前を呼んでみても反応は無く、それほどまでに熟睡していることがわかる。
そんなに熟睡していて、刺客が来たらどうするつもりなんだと土方は呆れた。
「夜神、起きろ!」
さっきよりも声を大きくして叫んでみるものの、反応無し。
さすがに土方もイラついてきた。
近くにあった石を夜神に向けて投げた。
その瞬間、夜神は目を覚ますとその石を刀で弾く。
「よう、起きたか。」
「土方さん、もう少し普通の起こし方は無いんでしょうか?」
「普通に起こしても起きなかったのはお前の方だ。自業自得だな。」
冷静に答えている土方だが、内心は驚いていた。
土方が投げたのはさほど大きさのない石。
それを見事刀に当てて弾いて見せた夜神の腕前は、本物なのだと思い知らされた。
「夜神、今からお前の歓迎会が始まる。すぐ降りて来いよ。」
「まだ少し眠いんですけど、行かなければならないのですか?」
「当たり前だ。お前が主役だぞ、主役がいなくてどうする。」
夜神は、渋々木の上から降りてきた。


