斉藤さんは手加減をしてくれないだろう。
ならば、私も少しは本気でやらねばならない。
絶対とは言えないが、それでも勝つことはできると思う。

「お前が刀を抜いた瞬間から始まりだ。」
「わかりました。」

さっきまで無口だったくせに、急に喋るようになったな、斉藤さんは。
怒るとよく喋るような性格でもしているのかな。
・・・・・・不思議だ。

さて、そろそろ始めるとするか。
斉藤さんは、刀を抜いたら始まりと言っていた。
ならば、始まる前に仕掛けて、始まった瞬間斬りかかろう。
私は、地面を蹴って斉藤さんとの距離を一気につめた。
そして鞘から刀を抜き、斉藤さんを斬ろうと試みた。
が、斉藤さんはそれよりも早く動くと、私の首を狙って刀を振るった。

「これは、予想外ですね。」
「遅いな。それは、総司や土方さんには通用しても俺には通用しない。」

ちょっと、自信が揺らいだ。
速さは私の武器なのに、それを封じられたとなると勝つのは難しい。
だが、弱気になってはダメだ。気持ちで負けることこそ、本当に負ける一番の原因となってしまう。

「・・・・・戦い方を変えたほうがいいみたいですね。」
「余裕だな。
しかし、それも今のうちだ!」
「・・・はやっ!!」

速い。この人は本当に速い。
正直、こういう人の相手は苦手だ。
自分の個性を活かせない上、速くて捕らえにくい。