・・・夜神視点・・・

『生きろ』

その言葉は、いつの日か言われた言葉。
この言葉があるからこそ「生きよう」、そう思えると言っても過言ではない。
私は少し、おかしい境遇で生き抜いてきた。
そのせいか、生に対しての執着心はかなりあると思う。

ならば、なぜ危険な場所に自ら行ったのか。

新撰組が危険な場所と知っていた。
それでも、成り行きとはいえ、その者達と行動しようとするのは、どんな理由があるのだろう。
それは、私自身よくわかっていなかった。

「・・・かみ・・・・夜神!」
「は、はい、何でしょうか。」

いけない・・・。
考え事に集中にしていて、周りの声が聞こえていなかった。

「あの、何の話をしていたのかもう一度教えてくれませんか?」
「はあ。お前の一人称をどうするかを話していたんだ。」
「私の・・・・・?」

意味がわからない。
なぜ私の一人称を変えなければならないというのだ。

「そうだ。お前、一応男装の身だろう。一人称が『私』ではバレやすくなる。
だから、どうするかを決めていたんだよ。」

なるほど。土方さんは、いつでもわかりやすく教えてくれる優しい人だ。
しかし、一人称を決めなければならないのか。今まで大して意識をしていなかったから、いまさら考えろと言われても困る。

「やっぱり、雰囲気からして『僕』でしょう。」
「いいや、ここはあえて『俺』でどうだ。」
「いっそ、『我』とか『わし』にしてみよう。」

口々に候補が挙げられているものの、最後の二つだけはやめてほしい。