夜神は、もう一度距離をとる。

「・・・・・っ!」

沖田は、もう十分に夜神と離れているにも関わらず、後ろに下がった。
それは、夜神から出てきた殺気が原因だった。
冷たく、殺没とした殺気は夜神の雰囲気からは考えられぬもの。
周りもその変化を感じ、息を飲んだ。
驚きと困惑が混じった瞬間。夜神はそれを見逃さない。

「終わり、です。」
「え・・・・?」

沖田の首につけられた竹刀。
目の前には、何を考えているのかわからない夜神。
騒然とする部屋のなかで、ただひとり、夜神だけが平然と立っていた。

(気配も何も感じなかった・・・。)

いまだ驚いたままの沖田に、夜神は竹刀を下ろして笑いかけた。

「わずかに出来た隙を逃さなかっただけです。
隙が出来なければ、私の方が負けていたと思いますよ。」

夜神は竹刀を隊士に返し、鼻歌混じりに歩きながら、もといた土方の部屋へと戻った。