「いでっ!!!」

ズダーンとかって派手な音を予想してたんだけど、ごろごろと落ちたせいか、俺の後頭部がごちんっと地味な音をたてただけですんだ。

「あたた・・・
ごめん、大丈夫だった?」

腕の中で固まってる彼女に声をかけると、真っ青な顔をあげた。

「うぅ、初めてだったのにぃ・・・」

「えっ、何が?」

「私のファーストキス、返せーっ!」

「えっと・・・ごめん・・・」

そっか、初めてだったんだぁ・・・

悪いことしちゃったなぁ・・・

うるうると涙目の彼女は、俺の腹の上に跨った格好のまま、ぽこぽこと俺の胸を叩く。

痛いわけじゃないし、それで気が済むんならいくらでも叩かれて構わないんだけど、演奏の時間が気にかかる。