丹朱の橋、葉桜のころ

ボクは爪を立てないようにサツキの腕を蹴り出て、彼女の後を追った。あんまり遠くに行っちゃダメだよう、とサツキの声が追いかけてきた。

彼女の後を追い、「流水庵」に沿って裏手へ抜け、新芽の薫りを踏みつけながら走った。

湧水の水路を跳び越え、やわらかな草花に受け止められた。

なぜ忘れていたのか。
ここ数日の、毛繕いすら許されぬぼんやりとした日々。
首につけられていた無様なラッパ。


さらにその前の、彼女と出会った、あの夜のこと……。