気がつくと、彼は目の前に来ていた。 「――」 私の前に立って、ためらいがちに手を伸ばして私の頭を撫でる動作をした。 感触のない、それは無意味な行動だったが、私の心を和ませるには充分だった。 「――」 彼には何も言わなくても私の哀しみがわかる。 私は、無意味なように思われる彼の行為の中の思いやりが嬉しかった。 私達の間に、余計な言葉はいらなかった。 言葉がなくても、私達には互いの気持ちがわかった。 何故なら、どちらも、待ち続けるだけのものだから。