その夜、お市は自室で探し物をしていた。









それは繊細な硝子細工の花飾りがついた簪(かんざし)で、昔お小夜と色違いで買ったものだった。












「あった!」







花簪は箪笥(たんす)の奥にしまわれていた小間物を入れる箱の中にあった。












たとえ宝であろうと、大事にしまい過ぎて失ってしまえば意味がない。








思い出とて同じだ。



昔、お小夜に言われた言葉が頭に響く。












壊れものを扱うようにそっと手にとった。







目を閉じれば懐かしい思い出が昨日のことのように思い出される。









あとひと月ほどすれば、お小夜は嫁にいく。











今お小夜はどんな気持ちでいるのだろう…










お市は簪を飽きることなく眺めていた。