お小夜の縁談相手は『嘉納屋』という小間物問屋の若旦那で歳は三つほど上らしい。 お市は近々自分にもあるであろう話としてお小夜の話に耳を傾けていた。 それから二人は他愛のないことを話ながら、いつも寄り道する店の近くまで来ていた。 普段なら、若い娘らしく半刻ほどは話こむはずだった。