次第に沸き起こる苛立ちが声を荒げさせていった。


「私の何を知ってるっていうの?あなたはそう言うけど、それはいつ?どこでよ!?」


一瞬視線があつまった気がしたけど、そんなの気にしない。


私は彼を鋭く睨んだ。


すると、初めて彼の瞳に陰りが見えた。


「それは、さゆに思い出してほしいな……」


さみしそうな儚い苦笑い、かなしみに揺らぐ瞳。


何でそんな顔を私に向けるの……。


「その時まで俺は待ってるから」


そして、優しく笑いかける、私に。


こんなに突き放しても突き放しても、何で優しくできるのよ?


先に歩いていく彼の背中はさみしく、だけどもすごく広い。


私の胸は痛むばかりだった――。