でも、こぼれる笑みはうまく止められないものである。


本当は彼の妹ののんちゃんにも負けないほど、嬉しくて、心は浮き立っているはずなのだ。


だって、初めてあの絵をもらった瞬間、きっと私は彼に魅せられていたのだから。


「俺は決めたんだから、さゆもちゃんと小説家目指してよ」


彼が得意げな笑顔を見せるから、風も背中を押すように前へと吹き抜けていく。


彼はいつだって簡単に言ってくれるものだ。


だから、私は何も言わずに微笑んだ。


そんなことを言われては、逃げるだなんて格好悪いだろう。