――この公園のベンチから、もう何度景色を見渡しただろう。


高い空に、私たちよりずっと背丈の高い木々。


私はその木々の変化を、いつのまにか目に焼き付けていた。


纏う葉をなくし露になった枝たちが、どこかさみしげな春を待つ冬の姿。


命を燃やし薄紅の花を精一杯美しく咲かせる幻のような春の姿。


花が終われば青々とした葉たちが元気いっぱいに茂る夏の姿。


もう三つの季節の移ろいを見てきた。


それだけの時を、彼とともに過ごしているんだ。


そんな彼が、今日も私の隣にいる。


すでに私の右隣は、彼の定位置だ。