すると、一歩一歩お母さんによって距離がつめられる。


距離がつまるたびに、体は強く強張って、萎縮した喉は何の声も出せない。


私はこわさから、瞼をきつく閉じた。


その時、玄関に頬を打つ乾いた音が大きく響き渡った。


頬は痛みに痺れ、心にも痛みが突き刺さる。


なのに、私の体は昔から知ってる温もりに、苦しいほどにきつく抱き締められたのだ。


「無事でよかった……」


お母さんはそう肩を震わせながら、聞き落としてしまいそうに小さい声がした。


その後も耳元では嗚咽が耐えず、私も目尻にあついものがたまっていく。