濡れた地面の上に黒い学ランが惨めにひろがる。


「どういうこと……?」


彼はその場に足をくっつけたままかたまり、声はか細く小刻みに震えていた。


「みんな、さゆのことを心配して」


「心配してくれなんて誰が頼んだ?私は好きでここにいる。もう帰らないから」


私は彼の言葉をすぐさま遮った。


あんな場所には帰りたくもない。


戻っても居場所がないなら、ここにいるのも同じことだ。


我慢ばかりの籠の中に戻るくらいなら、私は迷わずここを選ぶ。


私は彼の揺れ惑う瞳を強く見返した。