――降りしきる雨のなか、目の前には膝に手をついて息をきらす少年が立っていた。


「心配したじゃん、さゆ!」


川の大きな音にも負けない声が真正面から私を刺す。


そして、彼の瞳は力強くもあり、心なしか潤んで私をとらえていた。


「お母さんたち探してて、俺のとこにも連絡きたんだ。とりあえず帰ろう」


彼はそう言いながら学ランを脱ぐと、私の頭にそっとかけた。


彼の優しい温もりと湿った匂いが包んで、私の上だけ雨が止む。


「帰る気はないから……」


私が喉から捻りだした声はあまりに低く、ともに学ランが地面に叩きつけられる音が響いた。