指でその雫を拭えば、手にいくつもの水滴が落ちてきた。


上を見上げれば、黒い空が我慢できずに泣きだしている。


私は口をぎゅっと結んで、微かに空に笑いかけた。


今は体を濡らすこの雨が、心地よくて有り難くも思える。


こうしている間も冷たい雨粒は一粒一粒、髪を湿らせ、服にしみ込んでいく。


それが次第に体温を奪っていってくれるようで、私は拒むことなく雨を全身にうけた。


もう何でもいいのだ。


こんな身体、私はもういらない。


「さゆー!」


しかし、邪魔をするように、私の名が響き渡った。