奇跡じみたことを願って、普通の人がみるような夢を見て、自分にも手が届くと勘違いしていた。


昔の私なら、それは到底有り得ないこと。


でも、彼に出会って私は馬鹿な夢を見るようになってしまった。


まるで普通の女の子にでもなったかのように……。


私はペダルの上で動かない足に視線を落として、力なく膝をたたく。


こんな足のくせによく夢なんか見られたものだ。


私は自分を嘲笑った。


「あっ、紗由里ちゃん。何してるの?」


しかし、鈴のような声が私の名を呼ぶ。


そこにはにっこりと、やわらかく微笑むなっちがいた。