後輩想いで、面白いことを言ってはみんなを笑顔にしてくれる。


そんな、面倒見のいいお兄ちゃんみたいな人だった。


そして優しいだけではなくて、しっかり自分を持っている人でもあった。


時にはうまく動かない自分の身体に苛立ち、怒りを表に出すこともある。


でもその苛立ちは、懸命に自分自身で生きようとしている人間こその感情だ。


諦め切っている私には、そんな感情もない。


先輩は私にはないものばかりを持っていた。


私は床に落ちた内川先輩の力強い絵に胸の奥を苦しいくらい締め付けられる。


イラストレーターの夢も、先輩なら間違いなく叶えられただろう――。