死人も同然な人間のくせに、血の管を前に手が躊躇う。
狙いなど定まらぬ程に、カミソリが大きく震えて止まらない。
昔からあれだけ死ぬことを思い描いて、この生きにくい世から消えることが私のたった一つ希望なのに。
「動いてよ……!死なせてよっ――!」
涙を撒き散らし、声は裏返り、狂ったように叫んだ。
その手首にカミソリを深く押しあてることすらも、満足にできない右手が憎くて仕方ない。
ここに血の流れている自分も、涙を次々と落とす自分がいることも許せない。
私は意気地なしの心を追いやって、頭で右手に渾身の力を込め待ちに待った死の瞬間が訪れようとしていた。

