――私はここ数日、家でろくに口をきいていない。


思い起こしても、本当に必要最低限の言葉しか発していない。


そんな日々が続き疲れてはきたが、同時に慣れてもきた。


人間というのはそういう点だけよくできていると思う。


重苦しい無音のリビングに、背にあるキッチンには母の気配。


この間まではこんな状況には堪えられず、まるで肩に重石が乗ってるみたいだった。


だけど、今ではもう普通に検定勉強ができている。


右手はただ乱暴に、何度もやった原価計算の過去問の穴を埋めていく。


欄に埋められた字は、まさに書きなぐりの醜いものだった。