男性ボーカルのクリアな声が歌詞をメロディにのせる。


このバンドは何より綺麗な言葉を紡ぐのだ。


すごく言葉を大事にしているのがわかるから、私は好きなのかもしれない。


「さゆも好きだったんだぁ。このバンドは幼馴染み同士で組まれてて、小さい頃からのデビューの夢を叶えたんだよね」


横目に彼を見れば、キラキラとした木漏れ日が顔に落ち、無邪気な笑顔がより一層輝きを増す。


でも、私はその笑顔も、夢という言葉も心に引っ掛かるばかりだった。


「きっとさゆだって、小説家の夢叶うよ――」


その刹那、地面に落ちていた木漏れ日がふいに消え去った。