だから、今ぐらいはこの暖かさに浮かされて夢を見ていても、罰は当たらないだろう。 「さゆ、お母さんは大丈夫……?心配してるんじゃない?」 張りのない沈み気味の声が、いつの間にか隣からではなく後方から聞こえてきていた。 私が車椅子を止めて振り向けば、彼の白いスニーカーが地面に張りついたかのごとく前に出ない。 私はため息を吐いて、優しく頬を撫でてゆく風に瞼をおろす。 彼はこの穏やかな風みたいに繊細な人なのだ……。 「私が誘ったんでしょう、気にしないでよ。今は少し忘れよう」