背中で震えた声がした。
空気が一時淀むようにして固まる。
だけど、私は必死に聞こえないふりをした。
なのに、お母さんは私に逃げ場を与えてはくれないのだ。
「お母さんはね、これからの未来、辛い想いはさせたくないの。ちゃんと光君との未来が想像できる……?」
さっきより近づいた声にゆっくりと上を向けば、お母さんが私を見下げていた。
やっと出したような潤む声。
涙ぐんだ瞳で堪えるような苦しい顔。
「だから、さゆなら、わかるわね……」
お母さんはどこまでも残酷な響きを残して、私の部屋から姿を消した。
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