でも、そんな私の小さな勇気が手の平にある。
“俺、頑張るから”
手の平におさまるケータイの画面が微かな光を放つ。
消えてしまいそうな、針の穴ほどの小さな小さな僅かな光。
握り締めれば勇気が流れ込んでくるような気がして力をこめてみるけれど、指先は一段と冷えていく。
「……さゆ、そろそろリビングに戻りなさい」
左耳から聞こえてきたお母さんの声は、私にはこの空気よりも冷たく聞こえた。
ケータイの画面の光が消える。
やっぱり私がここから飛び出すのは無理だ。
無力な私はこんな細い光の糸にはしがみつけない。
でもその刹那、窓越しに聞こえた聞き慣れた足音に、私は心がやすらいだんだ。