文字が消えると、私は消しゴムを投げ出して、シャーペンに持ちかえた。


「さゆ、前より側湾が進んだんじゃないか?体が歪んできたように見えるぞ」


でも、その時耳に届いたのは、聞きたくもない言葉。


右斜め前の席に座ったお父さんは私を見ては、悪怯れることもなく平然と言うのだ。


お母さんの心配の言葉とは全く違う。


シャーペンの芯が静かに折れた。


いつだってそうだ。


お父さんは平気な顔して、気にしてる部分をずけずけと土足で踏み込む。


「少しは横になって休めば」


そう言いながら、リモコンを片手にテレビから流れるコメディアンに笑いを洩らす父親に、私はシャーペンを握る手にありったけの力を込めた。