「やっぱりなぁ!またよろしく、紗由里」 ともの言い方はあまりに軽くて、元気に笑顔。 何度こんな会話を繰り返しただろうと思うと、つい笑いが漏れそうになる。 「あっ、祐貴だ!行ってくるー」 玄関にちょうど祐貴の姿が見えて、ともは張り切って車椅子をこぎ風のように去っていった。 本当に忙しない、ともは昔から。 そしてなっちは、そんなともの姿を目で追っていた。 私が見てるのも、周りの音も気付かないほどに、いつまでも、背中が見えなくなるまで――。 「……いいな。十二年も一緒なんて」