「紗由里ちゃん、おはよう」
ぎゅっと塞いだ耳から、微かに声が聞こえてきた。
我に返って振り向けば、ツインテールがさらりと揺れるなっち。
「お、おはよ……」
私はひやりとした驚きを抑えながら、挨拶を返した。
するとなっちは、にこにこしてクラス表に目を移す。
「え~と、私は去年と同じだぁ」
そう言いながらも、目の前の紙から目を離さないなっち。
「紗由里ちゃんはまた、友博君達と一緒なんだね――」
そして、なっちが何気なく呟いた、いつもと同じような声で。
だけど、私は一瞬だけなっちから笑顔が消えるのを見た気がした……。