横目に見える彼は小さくガッツポーズまでして、顔を綻ばせている。


絵をただ持ってただけなのに、彼は心底嬉しそうにまたお礼を言うんだ。


だから、私は戸惑うばかりで、顔を隠すように俯いた。


穏やかに吹く冷えた風に、らしくない私が少しリセットされそうで落ち着く。


すると、彼の息を吸う音が微かに聞こえた。


「あっ、桜だ――。もうすぐ咲きそうだね」


声に導かれるように顔を上げれば、彼が高く手を伸ばしている。


その長い指の先には、綻びかけの桜の蕾――。


それはぷっくりと膨らんで今にも咲きそうだ。