おまえの・・・沙津季の心に、真っ白な花が咲いたんだ」
花・・・私に・・・?
「どうして?」
「分からないけど、沙津季の強い心が、花を咲かせたんだよ」
私の・・・強い心?
「私、強くなんかない」
「沙津季?」
私は拳を握りしめ、涙を流した。
「あの時・・・鋼賀くんが言ってくれなかったら、私、きっと・・・」
「まどかをいじめてた?」
小さく頷く私を・・・優しく抱きしめてくれた。
「普通なら、みんなそうしてる。俺だって・・」
まるで、小さな子供みたいに泣く私を、お母さんのように
「大丈夫だ」
「もう、いいんだ」
と言ってくれた。どのくらいたったかな・・・?
「誰かに抱きしめてもらうなんて、久しぶり・・・」
目をこすると、かすかに痛く感じた。多分、目が腫れているんだろう。
「じゃあ、もっと抱きしめてやるよ」
鋼賀くん・・・
「沙津季・・・・」
聞き覚えのある声の先には、まどかが立っていた。
「まどか・・・」
鋼賀くんの手をどけ、まどかと向き合う。
「沙津季・・・ごめんね。私、ずっと羨ましかった。なんでも出来て、可愛くて、みんなから好かれている沙津季が・・・」
そういうまどかは、まだほっぺが赤かった。
「さっき、沙津季が私に行った時、ほんとにびっくりした。私、いじめるんだって思ってたのに、」
私だってびっくりだよ。
「私、どんなに人をいじめても、その人を苦しめても絶対その人には勝てないって分かった」
「そんなことないぜ」
鋼賀くんは、腕組をして言った。
「おまえだって、はなが咲く。人はほんとにがんばった時に花が咲くんだ」
まどかは不思議な顔をしてから、クスクスと笑った。
「鋼賀君って、メルヘンチックだね」
はあ!?と大声を出す鋼賀くんにまどかは笑いながら言った。
「・・・でも、花かあ。ねえ、沙津季。これから花屋さん行かない?」
「えっ?」
「私たちにぴったりの花を探しに行こう?」
「・・・うん!」
私は嬉しくて、また涙が出た。そんな私を見て、まどかも泣きだした。
「~おまえらいい加減にしろよ!花屋閉まっちまうぞ!」
「いけない!早くいこ!」
「あっ!ノエル」も誘っていい?」
「もちろん!私、ノエルに謝らなきゃ」
私、分かった気がする。
人それぞれには、心の奥・・・それよりずっと奥に花がある。
その花は、気持ちで恋のピンクや、悲しみの青、いろんな気持ちの色に染まっていくんだと思う。だから、きっと今、私の心は・・・
「沙津季!行くぞ」
この人に、ピンクの花を咲かせてる。