「なっ!!」
まどかは顔を真っ赤にして、肩を震わせていた。少しタコみたい。
「鋼賀!よく言った!」
「だよな~あんな女。というか、中野原よりブスじゃん」
「今までごめんな。中野原」
クラスの男子の態度が変わった。昨日の今日で、バカにしてたくせに・・・
「言われてみれば・・・」
クラスの女子は、ちらりとまどかを見ると、クスクスと笑い出した。
「ね、沙津季。今までごめんね。」
「私も!」
女子まで・・・その中で1人。申し訳なさそうにこちらを見ていた。
「あの・・・沙津季・・・」
ノエルはスカートを握りしめ、まるで小さい子供のように見えた。
「いいんだよ。ノエル。私、全然気にしてないから!」
私が明るく振る舞うと、泣きそうな笑みをした。
「あり・・・がとう。ご・・・めっ・・ね」
泣きながら謝るノエルに、女子はすかさず駆け寄って来た。
「ノエルって呼んでいい?」
「モデルなんだよね?」
「すご~い!可愛い!!」
そんな女子を見ていたまどかが怒鳴った。
「ちょっと!あんた達!」
一瞬で女子・男子の表情が変わった。
「・・・なに?」
「そいつが誰だかわかってんの!?沙津季よ!?」
「だから?」
まどかは、徹底的に私から皆を奪おうとした。が、
「あんたといるより、沙津季やノエルといた方が楽しいもの」
「そうだ!おまえ、中野原に謝れよ」
男子の言葉に皆が賛成した。
「謝れ」
「ほら、早く」
男子はまどかを取り囲み、頭を床に押し付けた。かつて、私がされていたように。
「いやっ・・・やめ・・・」
私がどれだけいやだと言った?あんたはその時どうした?他のみんなだってそう。でもね、私はあんたが一番許せない。私から友達を奪い、未来を奪った。それだけは絶対に・・・
「沙津季」
はっと我に返り、鋼賀くんを見た。鋼賀くん・・・
私は地べたに張り付いたまどかに歩み寄った。
「おっ?やっちゃう?」
「やれやれー!」
まどかは許しをこうように私を見ている。自慢の顔は赤くなっていた。
「っ・・・・」
髪を引っ張られ、まどかは私の目を見た。
まどかは目を瞑った。私は大きく手を振った。
『パンッ』
教室中・・・もしかしたら、学校中に響いたかもしれない。
「つっ・・・」
私は両手で思いっきりまどかのほっぺを叩いた。
「・・・今までのは、これでチャラにしてあげる。いっとくけど、私がウケタ傷みは、悲しみは・・・こんなもんじゃない。でも、やっぱり、痛いよね」
すっとまどかのほっぺを撫でる。赤くなっていて、少し熱かった。
「ごめんね」
それだけ言って、教室を出た。教室からは、
「沙津季かっこいー」
「すげえ!」
と、歓声が出ていた。そして、まどかのすすり泣く声も・・・