10歳の頃、親が離婚した。
最初は、「いやだ」、「離れたくない」って、駄々をこねた。
でも、冬のある日。突然、声が聞こえた。
「早くこんなやつら置いて、博さんの所へ行きたいー・・・」
それは紛れもなく、母の声だった。俺は聞いた。
「お母さん、博って誰?」
俺の一言を聞いていた父は問い詰めた。
母は浮気していた。2年前からその博と浮気し、子供もいるらしい。
「もういいだろう、鋼賀!?こんな奴とはもう一緒にいられない!」
その時、また母の声が聞こえた。
「こいつが余計な事言うから・・・」
それからすぐ、離婚した。
俺はその時を境に、俺は人の心の声が聞こえるようになった。
そして、今。16歳の俺は、ある少女と出会う。
「中野原沙津季」
彼女からは、なんの感情も読み取れなかった。
他の女子からは、
「マジカッコい~」
「あいつさ~」
など、嫌なくらい読み取れた。
でも、彼女からはなにもなかった。いじめられていた時でさえ・・・
「私を助けて」
それが、はじめに聞こえた心。叫びだ。
俺は、静まりかえった保健室で決意した。
「彼女は・・・沙津季は俺が守る」
憐れみや可哀想だからじゃない。ただ、純粋に守りたいと思った。
窓から、オレンジ色の夕日が輝いていた。
それは、俺の心のようだった。